きっかけは『誘拐』

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    剣呑な目付きで俺を睨む女は、 並みの女ではない。 父親が水竜、母親は魔術師。 見た目通りの年齢では ないらしい。 母親は大した女だった。 しかしコイツは そこまで大物 じゃないな。 目は据わってるみたいだが、 指先が コトコト震えてる。 本人、分かってるんだか… 分かってないんだか。 『お前は ココに居るしかない  んだよ』 『なによ、閉じ込められるのは  アンタだけでイイでしょ?  私は関係無いもの!』 ……分かってねぇな。 生意気そうに顎を持ち上げて、 生意気な口をたたきやがる。 …虚勢張っちゃって、まあ… 捻り潰したくなるくらい…… ………可愛いじゃねぇか。 ニヤニヤ笑いが止まらない。 『な…なによッ!ヘラヘラ笑っ  てんじゃないわよ!』 腹立ちまぎれにか かろうじて卓上に残った燭台を、俺めがけて力まかせに投げやがった。 なんとか飛んだ重たい燭台は 俺に届く前に広い机に落ちた。 『残念だな?八つ当たり 届か  ず、ってトコか』 クッ、と喉を鳴らすと 彼女の 顔が悔しそうにゆがむ。 『万が一 城から出られたら、  城壁から外へは簡単に抜け出  せるんだぜ?』 親切げに教えてやってるけど、 コイツ程度の力じゃ 無理なのは分かりきってる。 先代が掛けた結界。 城には 竜封じ。 城壁には 竜避けと魔術師封じ。 城から 竜は出られない。 城壁から竜は出られるが 入れない、そして魔術師は…真逆。 そうだ。 コイツは生まれ持つ血脈ゆえに ここから逃れられはしない。    
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