きっかけは『誘拐』

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    『それ…変よ!』 地を這う様な低いつぶやきが 彼女の口からこぼれる。 『なら、あんただって城から出  られない筈よ?』 ハハッ、良い処に気づきました …だな。 『そうだな、俺も火竜だしな』 アッサリ認めると 無遠慮な視 線が俺に注がれた。 『…なら…どうして…』 掠れた声、うなだれる金の髪、緑の瞳が光るのは涙か? いいねぇ………お嬢ちゃん! 泣きっ面もキュートだ! 益々 ニヤニヤ笑いが引っ込ま なくて困るじゃねえか。 無理矢理 渋面を作ると秘密め かして声をひそめる。 『どうしてだか知りたいか?』 カクリ、とうなずいた彼女に こらえて居られなくなる。   ヒャハハハハハッ! ヒイヒイ笑い出した俺に 彼女 は目を見張っている。 『どうして…ってか?  先代より 俺様の力が強い!  それ以外の答えは ねえよ』 悔しそうににらむ瞳の縁が朱に染まってゆく。 『だから 俺様は出入り自由な  んだ、よ~く覚えとけ』 唇を噛みしめた彼女を 勝ち誇った顔で呼びつける。 『……来い』 伸ばした掌に向かって 彼女は 一足飛びにやって来た。 そして 細い指が俺の掌に…     ぱぁん! 弾ける様な音の出所は俺の掌。 白い指先は思い切り俺の掌を 叩いていた。 忌々しげな表情で 椅子に掛けたままの俺を見下ろす彼女。 ………不様だ、な。    
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