出逢いは『scout』

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    先代には 子供が無かった。 そして 妻も亡い。 一人 魔術師を統べ、火竜の脅威に曝されてる街を護ってた。 だが 限界だったろう。 既に腰は曲がり、足元さえも覚束ない。 強力な魔力があったとて 咄嗟に使える反射神経も無い。 後を託すべき血縁に魔力は無く 魔術師達の中にも 抜きん出る者は無く。 そんな時 先代と俺は出逢った。 火山の麓がつまらない俺は 人型になって 街をヒョイヒョイ 歩き回っていた。 齢千年、といえば嘘になる。 三~四百歳の火竜が 俺だ。 一緒の頃に産まれた奴等は死に 絶え、今居るのは奴等の子か… 孫か…もっと後の世代か…。 周りの奴等に魔力は無かった。 喰らう、寝る、暴れる。 単純な奴等だ、能無し共。 つまらなかった。 毎日 同じ事を繰り返す日々。 街を襲うか、と持ちかけても 一度でも城壁の竜避けに触れた 者は 尻込みした。 触れた瞬間 バリリ、と飛び散 る金色の火花と その身を揺る がす衝撃。 怯えきった奴等は 城壁には近寄れない、近寄らない。 獰猛で知られる火竜が! なんてザマだ、みっともない。 俺だけは城壁に通いつめた。 何とか 魔術を破ってやる! 挑んでは弾かれ、弾かれては再び挑む。そして ある日、ふと思った。 『人間なら入れんじゃね?』 阿呆な思い付きだが、そんなに 馬鹿でもなかったか? 苦心惨憺の上 やっと成れた人 型で、城壁に入るのは…意外に も容易かったからだ。 俺は意気揚々と街を練り歩いた    
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