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総司はなぜか、目の前の新選組幹部を斎藤一だと思い込んでいた。
もともと勘は鋭い性質だったが、今夜ばかりは見事に外れた。
「総司、何を言っているのだ。どこか悪いのではないのか」
自分を呼ぶ声の主を知るのに、それほど時間はかからなかった。
総司は我を忘れ、顔を上げる。
「土方さん……」
総司の目の前に立っていたのは土方歳三だった。
――一番まずい人に知られてしまった。
沖田の表情に、初めて焦りの色が見えた。
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