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「……私はまだやれますよ」
「それはお前の決めることではない」
土方は冷たく言い放つ。
厳しい男だった。
総司は柱にすがりながら立ち上がって、土方を睨むように見ていた。
手にはまだ抜き身の刀をつかんでいて、美しいほどに血が滴っている。
「大丈夫ですよ。こいつがありますから」
総司の顔から苦悩の表情は消えていた。
そんなものは初めから、うっすらと浮かべていただけのようにも思えた。
土方の見る限り、総司の表情に絶望や悲哀といった、暗いものは一つもなかった。
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