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――そんなこと、今はできないな。
新選組で、まだたくさんするべきことは残っている。
何よりも自分のために今、新選組の第一線から退くことはできない。
そんな風に総司は思った。
医者へは誰にも気づかれぬよう用心して行ったつもりだったが、医者の家を出てすぐ、努力むなしく新選組幹部の一人に声をかけられた。
「沖田君、お帰りですか?」
からかうように言ったのは、三番隊組長の斎藤一だった。
「斎藤さん。聞いていたんですか?」
「あぁ聞いたよ。それにしても君は少しも暗い顔をしないな」
「そうですか?私も、病気するのは嫌です。すぐ疲れますからね」
総司は真剣に言ったつもりだったが、どうも軽い調子に聞こえていた。
「局長に話をしてみよう。きっと養生させてくれるだろう」
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