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――――――…………‥‥‥‥
『よっしー』
『うん?』
『サッカーやめるってマジ?』
『うん。マジ』
『マジかぁ…』
『マジだよ』
『マジかぁ…』
夕方の、皆が帰った運動場で、光樹は気が抜けたように小さく呟くと、くてん、と、鉄棒に寄りかかった。
彼の長い影を眺めながら、俺は鉄棒に座り、ぷらんと足を揺らす。
『光樹は?』
『えー?』
『どーすんの?』
『うーん』
『続ける?』
『辞める…かなぁ?』
鉄棒に寄りかかったまま顔だけをこちらに向けて、光樹が答えた。
『微妙?』
『うーん。分かんないや』
『ふーん』
辞めたい…けど、辞めたくない。
光輝、負けず嫌いだもんな。
琢磨や翼が続けるのに、自分が抜けるのを後ろめたく感じているのだろう。
気持ちは分かるんだよなぁ。
『よっしーはさー、辞めるのに悩まなかった?』
『うん』
様子を伺いながら、光樹が不安気に問いかけてくる。つい意気がって、少し冷たく、つっけんどんに返した。
『そぉっかぁ…』
参考にならない俺の答えに頭を腕に伏せて、光樹は、うぅむ…と、唸る。
その様子を見て、少し、悪いな、と思った。
悩まなかった、わけじゃない。
それなりに頑張って来たわけだから、名残惜しい気はしていた。
でも、
『俺さー、大人になったら、やりたいことがある』
『なに―?』
よっ、と、短い声を出して、光樹は地面を蹴った。そして、ぐるんと前に一回転。
『俺さー、ゴーセイジャーになる』
『ゴーセイジャー!うわっ!なっつー!』
ドタン!と、光樹は力いっぱい両足で着地。
俺は、座ったまま後ろに体重を掛け、ゆっくり、くるんと後ろに半回転。
地面すれすれに頭を下にして、鉄棒に両膝を引っ掛けたまま止まった。
目ん玉が上に引っ張られる。
『ゴーセイジャーごっこよくやったよね!』
地面に手を着いて、トン、と足を降ろした。
『絶対翼がレッドで、俺がブラック』
『琢磨がイエローで、僕がブルー』
『輪がピンク』
『輪、ピンク嫌いって言ってあんまりやってくんなかったけどね』
『女のくせにな』
『輪は男女だからね』
本人に言ったら、ぶん殴られるだろう事を言い合って、俺たちは小さくクスクス笑った。
そして、
『敵はいつも、』
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