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-雫から見た光景-
私のお父様とお母様はいない。
なぜなら、殺されたからだ。
当時、私たちはいつものように決して贅沢ではなかったけどそれなりに楽しく暮らしていた。
そして、その夜私たちが寝静まったころ[ガタン]と音がして、気付いた時にはもう遅く家中に火が回っていた。
私はまだ幼かったため、恐ろしくて身動きをとれずにいた。
そんな時、お父様とお母様が私を外に放り出した。
私は訳がわからずただ、「お父様!お母様!」と叫んでいた…。
その後からの私の人生は地獄のようなものだった。
誰とも知らぬ男に取り押さえられ、様々なところへ売り出された。
どこも扱いは酷いものだった。
犬以下の扱いを受けるところもあった。
そんなある日、私は風間 千景と言う男のいるところに売られていった。
風間は私を今までの苦痛から救ってくれた。
なにを思ったか私を自分達の仲間に加えてくれたのだ。
でも、後からすぐにわかった。
私を売った男は風間達が使えている所から暗殺依頼を受けていたのだという。
それからは私も仲間なのだからと、風間達が日替わりで稽古をつけてくれた。
そのおかげで、今では風間と対等にやりあえるようなまでなった。
けれど、そんな幸せも長くは続かなかった。
私が朝起きたら風間達がいなくなっていたのである。
1通の手紙を残して…。
「お前も、もう一人でも生きてゆけるだろう。俺たちはこれから新選組にいる女鬼を迎えに行く。多分もう会うこともないだろう。いいか、新選組は敵だ。」
私は泣いた。
一晩中涙が枯れるまで泣いた。
泣きつかれたのか、私はいつのまにか寝てしまったらしい。
私はもう、あんな思いはしたくない。
……探しにいこう。風間たちをさがしに……。
あれからいくら歩いたか、京の町は賑わっている。
「…ふぅ。」
女の格好ではさすがに危険だから、袴をはいている。が、やはり少々歩きづらいな。
その時、誰かに軽くぶつかってしまった。
「あ、すいませ…。」
「あ゛?痛ぇーなちっこい兄ちゃんよー。」
うわっ!柄悪っ!
嫌なのにぶつかっちゃったなぁ。
「おぃおぃ聞いてんのかちっこい兄ちゃんよー。」
さっきからちっこいちっこい五月蝿いなぁ。
「おぃ、いいもん持ってるじゃねぇか。その腰に付けてるもんおいてきな。」
え、これ?これは絶対に嫌だ。
だってこれは風間にもらった大事な刀なんだから。
「嫌だ!これだけは絶対に嫌だ!」
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