初めての裁き

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浅野清春(あさのきよはる)がトイレを済まし、自分の部屋がある2階に戻ろうと廊下を歩いている時、母親の寿美子(すみこ)がリビングから出てきた。 「…………母さん、明日誕生日だねおめでとう」 清春は普段はめったにしない笑顔を作って言った。 「あら、覚えていてくれたの?」 母親の寿美子は、恋人に見せるような、この年にしては可愛らしい笑顔を実の息子に向けて言った。 「母さん明日、6時に帰ってくるからね、祝ってくれる?」 そう言うと寿美子は首を傾げる。 清春は伸ばしっぱなしの無精ヒゲを撫でながら「うん」と言って、照れた顔をして、自分の部屋へと戻って行った。 部屋に戻った清春は、描き掛けのキャンパスの前に座り筆を取った。
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