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ヒゲを全て剃りあげた清春は、水道の蛇口を回した。
「…ジャバジャバ…ジャバジャバ」
清春は何かにとりつかれたように、セッケンだらけの顔を勢いよく洗い流している。
「速くしなくちゃ!速くしなくちゃ!」
清春は心の中でそう叫びながら、顔を洗い続けた。
「ガチャ……」
清春が顔を洗っている最中、寿美子が帰ってきた。
しかし、勢いよく顔を洗っていた清春には、その水音で、玄関のドアの開く音が聞こえていなかった。
「バシャッバシャッ…バシャッ」
顔を洗い終えた清春は、顔をあげた。
「ただいま」
清春が顔を上げた瞬間、後ろから寿美子が声を掛けた。
声を掛けられた瞬間、清春は無意識に鏡に写る寿美子を見た。
寿美子もまた鏡に写る清春の顔を見た。
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