1.ウサギを追いかけて

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  「えっと…これで全部かな」  学校からの帰り道。思ったよりも早く委員会が終わったので、私は行き付けのスーパーに寄って買い物をしていた。  レジを済ませ、いつも持っているエコバックに買った物を詰めていく。少し買いすぎてしまったような気もするが、持てない程ではないだろう。  スーパーから出ると沈みかけていた日はすっかり暮れており、辺りは暗くなっていた。 「早く帰って夕飯を作らないと」  ここから家に帰るには駅前を通らなければならないが、この時間帯は帰宅ラッシュでとても混雑している。 「す、すみません」  流されないよう人込みを掻き分けて進んで行く。その間にも買い物袋が引っ掛かってしまったり、人にぶつかってしまったりでとにかく謝るしかなかった。 「それにしても…凄い人だな」  駅前のロータリーまで来ると、それほど混雑はしていないがそれでもやはり多くの人で賑わっていた。  この周辺には俗に言うメイド喫茶と言われるお店が多く、メイド服を着たお姉さんがチラシを配っていたり勧誘している姿がよく見かけられる。  いつか私もあんな可愛い服を着てみたいと思う反面、私にはきっと似合わないだろうとも思う自分につい苦笑いしてしまう。 「うわっ!?」 「きゃっ!!」  そんな事を考えていたせいだろう、思い切り人にぶつかってしまい勢いよく尻餅をついた。 「ご、ごめんなさい!!だ、大丈夫です…か?」  慌てて起き上がりぶつかった相手に謝罪する。だが私は目の前の人物に驚いて言葉を失ってしまった。 「いたた…」 「白…ウサギさん?」  そう、起き上がった私の目の前には白髪に白い兎耳を付け、可愛らしい丸眼鏡をかけた背の低い少年が居た。その姿はまるで『不思議の国のアリス』に出てくる白ウサギのようだ。  白ウサギさんは私とぶつかって同じように尻餅をついたようで、痛そうにしている。私が呆気にとられているとふと目が合った。そして何かに気が付いたのか、白ウサギさんにいきなり腕を掴まれてしまった。 「えっ!?あ、あの…」 「怪我、してますよ」  どうやら尻餅をついた時に手を擦り剥いてしまったらしい。自覚してしまうと何故か余計に痛く感じる気がした。
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