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「まぁ…この際いいか…」
私が痛みに半ベソをかいていると白ウサギさんは何かを諦めたようにそう呟いた。そして掴まれていた腕を引っ張られ立つよう促された。
慌てて立ち上がると白ウサギさんは腕を掴んだままもう片方の手で私の荷物を持って歩き出した。
「あ、あの…」
訳が分からず呆然としている私に白ウサギさんは足を止め、振り向いてこう言った。
「早く消毒した方がいいです。近くに僕がお世話になっている店があるので、一緒に行きましょう」
「い、いえ…そこまでしていただかなくても…」
ここから自宅までそうかからないから大丈夫だと伝えるが、白ウサギさんは納得いかないのか腕を放そうとはしてくれない。だがこればかりは私も譲れなかった。この程度のことで人様にこれ以上迷惑を掛けたくない。
「…そうですか、分かりました」
攻防戦の末、ようやく白ウサギさんは折れてくれた。しかし、ほっとしたのも束の間、白ウサギさんはとんでもないことを言った。
「それでは、ちゃんと追いかけて来て下さいね"アリス"」
「え…?」
白ウサギさんはニコリと笑ってそう言うと、一瞬にして私の目の前から姿を消した。
忽然と姿を消した白ウサギさんに呆気にとられていると、ふとあることに気付いた。
「あ、私の荷物!!」
そう、白ウサギさんはまだ私の荷物を持ったままだった。これでは自宅に帰ることも出来ない。
慌てて辺りを見まわすと、白ウサギさんは既に数十メートルも先の人込みに居た。異質を放つ格好は人込みの中でも一際目立っていた。
「待って!!白ウサギさん!!」
こうなっては呆気にとられている場合ではない。その間にも白ウサギさんはものすごい速さで人込みの中を進んでいく。私も白ウサギさんを追いかけて人混みの中へと進んでいった。
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