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「ハァ…」
渓谷を進んで数十分、思わずため息が零れる。
だって、一番最初に次元の穴に飛び込んだの俺なのに、なんで俺がはぐれてるの?
なんか納得いかないなぁ…
…まぁ、グダグダ考えてても仕方ないか、さっさと渓谷を抜けてしまおう。
そう考えて少し早歩きになった瞬間、後ろに何かの気配。
「…ゴクッ」
冷や汗が流れ、俺は生唾を飲み込む。
意を決して振り返ると…
ブルォォォ!!
と吠える大きな猪。
…なんか、怒ってらっしゃる…なんかマズい予感?
その証拠に、前足で地面を蹴る、猪独特の動作をしてる。
ここはひとまず…
「逃げろぉぉ!!!」
瞬間的に回れ右をしてダッシュ!
そして猪もダッシュ!
「来るなぁぁぁ!!!」
とか叫んでみたけど、猪がそれを聞いてくれるハズもなく、どんどん距離が縮んできた。
これはマズい。
非常にマズい。
焦ってるせいでまともな思考ができない。
ああ、もういい!ヤケだ!
「鋭き氷の牙よ、敵に噛み付き動きを封じよ!フロストファング!」
走りながら詠唱し、発動。
氷の牙が地面から現れ、走っている猪に突き刺さり動きを封じた。
よし、今がチャンス!
「おりゃぁぁ!!」
俺は剣を抜き、猪の頭に勢いよく振り下ろす。が…
バキン!…ドスッ!
「えっ!!?うっそ~ん…」
猪の頭に振り下ろした瞬間、刀身の半ば辺りから折れ、先の方が宙を舞ってから地面に突き刺さった。
武器が無い、魔法も上級や中級を唱える程集中力が今は無い、下級魔法じゃ勝機は無い。
イコール…?
「再び逃げろぉぉ!!!」
俺は地面に刺さっている剣先部分を鞘に入れ、柄側も鞘に収めてダッシュ!
まだフロストファングの効果が続いているのが幸いして、猪からだいぶ離れる事ができた。
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