特殊な日常

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※※※ それは最早記憶の片隅に残った欠片に過ぎない。 彼が生まれて初めて見たのは、無機質な白と、眼鏡をかけた男達。 まだ生まれたばかりの彼には、周りにいたのが誰なのかはさっぱり分からない。 覚えているのは、彼らの顔と、耳に残る唯一の女性の声。 それが一体誰のものなのかはわからない。否、分かっていた。 本能の最奥で、彼はその声が一体誰なのかはわかっていた。 しかし、生まれたばかりの彼に抵抗などという言葉は存在しない。 男達の内の一人に抱きかかえられ、そしてそのままどこかへと連れて行かれる。 耳には遠ざかる一人の女性の声がいつまでも響いていた。 ※※※
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