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息を切らし、彼はその場を駆けていく。
高層ビルが建ち並び、路地裏は青白い街灯の光と、街路に並ぶネオンの光が差し込み、どこか殺風景な雰囲気を漂わせる。
目の前の角を曲がって数メートル。彼はコンクリートで塗り固められた壁に手をつき、大きく息を吐き出す。
暫しの休み。しかし時は彼をほんのひとときすら待たせることは無かった。
手をついていた右の壁になにやら円と文字を組み合わせた赤色の文様が浮かび、ひときわ強く発光する。
彼はすぐさまその壁から離れ、二三歩後ろへと下がる。
次の瞬間その壁が轟音を立てて崩壊する。その衝撃によって、彼の体が数メートル飛ばされ、彼は地面に肘をついた姿勢で視線を上げた。
ガラガラと崩れ落ちる瓦礫の中から一人の姿が現れた。
「さあさあ、鬼ごっこは終わらないよ?」
臙脂色のブレザーとスラッグス、同色のネクタイに白のカッターシャツを着た茶髪の少年が、地面に這い蹲る彼を見て、息を喉から漏らすように、クックッと笑う。
地面に這い蹲る彼は、すぐさまその場から背を向け駆け出した。
そうして彼はどうしてこうなってしまったのかを必死に思い出していた。
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