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ここはフレイド村。
北にそびえる霊峰、セイデル山と、正面に広大な草原地帯、フレイド平原をのぞむ、豊かで雄大な自然に囲まれた小さな村である。
その村に一人の少年がいた。
まるで燃え盛る炎のように赤い髪をした彼は、村に唯一ある武器屋の裏で黙々と竹刀を振っていた。
髪の先端から滴り落ちる。比較的冷涼な土地ではあるが、彼の全身は汗でいっぱいだった。
「おいレイエス! ちょっと来てくれ!」
武器屋の工房の方から声がし、少年――レイエスは手を止め、駆け足で武器屋の工房へと入っていく。
「何ー?」
「いや、こいつの修理をしていたんだが、少しばかりアイスストーンが足りなくてな。
ちょっとセイデル山まで取ってきてくれないか?」
父親の頼みは所謂お使いなのだが、レイエスは渋るどころか目を輝かせた。
彼からするとそれはお使いと同様に、ちょっとした冒険なのだ。
断る理由は無いといわんばかりに首をぶんぶんと回し、大きくうなずいて見せる。
彼は工房の二階にある自分の部屋へと入り、壁にかけてあったコートを着る。
セイデル山のふもとに棲んでいる草食モンスターの毛皮を使って作ったそれは、雪山の中にいても保温性に優れ、雪山に入る際の必需品となっている。
そして背中に一本のつるはしと、いざという時のために鉄製の刀を一振り備え、そしてまず村長の元へと向かった。
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