‐ドア‐

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木崎様が右から2番目の席に座っていたので、そこから1つ開けた席に案内した。 おしぼりを渡し、コートを預かる間に分析してみる。 背は高めで着ているスーツは新しくリクルートスーツのようだ。 年齢は23、4くらいかな? 新入社員のように見受けられる。 雨には濡れておらず傘を持っていたのだろう。 それとも雨はもう止んでいるのかもしれない。 「いらっしゃいませ。 何かお決まりのものはありますか?」 何やら物静かな男性の様で、話しかけると萎縮してしまった。 「メニューもございますがご覧になりますか? 勿論、メニューになくとも大体のものはお作りさせていただきます」 様子を伺いメニューを広げ渡してみる。 「あの…ビールってありますか?」 「勿論ございますよ。 私も実はビールが好きなんです。 バーテンダーなのにビールってなんてよくいわれますが、ビールだって立派なお酒です。 カクテル=バーテンダーではなく、お酒=バーテンダーですね。 BARもしかりです」 私の言葉を聞いてホッとしてくれたようで、先程の萎縮した様子は感じられない。 店内のボトルや内装を見回す余裕が出来たようだ。 「じゃあ、ホワイトビールとかありますか?」 「勿論ございますよ。 かしこまりました。」 ヒューガルデンを冷蔵庫から出し、瓶の蓋を静かに開ける。 ビアグラスにそそぎ入れ差し出した。 「あ!それです!名前いつも忘れてしまうんですよ…」 男性の表情がパッと明るくなった。 「大丈夫ですよ。 ホワイトビールといえば代表的なものがこちらのヒューガルデンですから」 「そうなんですか! 飲みたかったんです!これ! ……はぁ、うまい!」 先程とは打って変わって楽しそうにしている男性を見ていた木崎様が興味津々で瓶のラベルを見ている。 「気になりますか?」 私が声をかけると、はっとした表情を浮かべ照れ臭そうに笑った。 「興味がありましたら試飲してみますか?」 「え?!いいんですか?!頂きます!」 とても嬉しそうに微笑むので、私も微笑み返し、ショットグラスに少し注ぎ差し出した。 「どうぞ」 余程興味をもったのか、差し出されたグラスを持ち、ライトに当てて色を見たり香りを嗅いでいる。 「では、お言葉に甘えて…頂きます」 丁寧にお辞儀をし口へグラスを運んだ。
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