‐ドア‐

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「おいしい…?!私ビール苦手なんです! …なんだろ?香りがいいような? それともマスターが作ると美味しくなるんですか?!」 目をキラキラとさせ、私を見ている。 勿論、私が作ったからなどということはない。 このビールが持つ独特の香りのおかげなのである。 「そうそう、僕もこのビールは香りが違うなって思って! それでハマっちゃったんですけどね! これってなんですか?シナモン?なんだろ?」 木崎様と男性がクイズのように、これかな?あれかな?と模索して聞いてきた。 このビールは先程言ったように少し独特なのだ。 「お二人とも残念ながらハズレです。 まずこちらのビールはエールという種類に入ります。 エールとはざっくりとフルーティーな海外の地ビールです。 こちらヒューガルデン・ホワイトと申しまして、大麦、小麦、ホップを元に、オレンジピールとコリアンダーを使うことでスパイシーでフルーティーな飲み口なんですよ」 「なるほど… でもオレンジピールとコリアンダーってなんですか? 僕あまりお酒詳しくないので…」 男性がそういうと木崎様も私もわからないという表情を浮かべていた。 「コリアンダーというのは香草でございます。 よく料理等でも使われる事があるレモンのような香りのする香草です。 オレンジピールとは簡単にオレンジの皮ですね」 二人はその後もホワイトビールとビールの違いを飲み比べながら何杯か飲み、終電で男性は帰っていった。 木崎様の方はというと家が近所でタクシーで1メーターらしく、お店に残ってくれた。 「マスター…なんだか今日あったマスターにこんな話し変ですけど… 少し聞いてくれますか?」 なんだか思い詰めたような表情を浮かべている。 「かまいませんよ。 私なんかが聞いて何か力になれるかはわかりませんが…」 木崎様は最近恋人と別れたと話した。 1年付き合っていたが、同居してろくに仕事もせず、一日中パチンコばかりで、負けるとお金を巻き上げられたそうだ… ずっと別れようとしていたけど中々別れられなくて、最近ようやく別れられ、家から追い出し鍵を変えたそうだ。 「ひどい男もいるもんですね。 私は彼を知りませんが、恋人同士ならばお互い高めあえる仲がいいです」
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