‐ドア‐

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「えっと僕のがタンカレーというジンだから…君のは、ボンベイ…」 「ボンベイサファイヤよ」 そうそうと頷きながら男性は女性のグラスを手に取った。 「ん?…味が違う?! 佳代も飲んでみて!」 半信半疑で女性も男性のジントニックを飲んだ。 「あ、あれ?! 本当だ!全然違う… なんだかこっち、何と言うか、辛い??感じ…」 「な!違うだろ? 違いのわかる男。宇野です。」 胸を張って決め顔をして笑わそうとする男性を女性は見向きもせずあしらった。 「あの…マスターさん。 これどう違うんですか? お酒に疎いもので…」 そもそもGINには沢山の種類があり、それぞれ風味が違う。 通常大体のバー以外のお店ではスピリッツも1種類づつしか置いていない事が多い。 だからあえてベースのジンの種類を変えたのだ。 そうすることで少なからずバーを楽しんでもらえるかも、と考えたからだ。 「そうですね… その二つのGINはまったく風味が違うのです。 タンカレーはすっきりとした飲み応えがあるイギリスのGINで、ボンベイは香り高いイングランドのGINです。 ボンベイには9つも香料が入っているんですよ」 二人は、なるほどと頷きながら飲み比べてみたり香りを嗅いでみたりしている。 少しお酒に興味を持ちはじめたようだ。 「GINはお気に召しましたか? よければもう一杯いかがでしょうか」 グラスもそろそろ開きそうだったので聞いてみた。
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