【prologue】

11/12
前へ
/53ページ
次へ
「・・・」 「なんだよつれねーな。いいよ俺一人で飲むから。おお神よ、よろしければこのワインに合う漬物をひとつお恵みください。あれ?」 強盗は装束を脱ぎながら暖炉の火が落ちていることに気づく。 「おいおい、なんか寒いと思ったらよぉ。おい、マッチはどこだい」 俺は再び顎で示す。 「そこの棚の上から三段目に入ってる」 ところで初代魔王、つまり俺の親父が打ち滅ぼした青年は赤・青・黄の三色の炎を操った。 それらを組み合わせた炎『-zero color- 』和訳を【無色の炎】。 他の魔術をその名の通りゼロ、最初からなかったかのように無効化する。 魔王が魔王たる絶対的力を示した最も有名な炎である。 「ふん、やけに素直になったな。そりゃお前も寒いのは勘弁だろうし当然だな。まあこれをきっかけに仲良くやろうぜ、縄はまだほどいてやれんけどな。安心しろ俺も鬼じゃねぇ司祭のはしくれだ、そのうち解いてやっからよ」 そういって自称司祭、本性は強盗の男は棚に向かう。 目に物見せてくれるわ。 魔王の炎『-zero color- 』には王国の兵士も王立魔道書院もギルドも手を焼いた。 正確には焼かれたのだが、なにはともあれ手も足も出なかったのである。 そこに英雄登場、親父だ。 南の島の田舎出身の親父が魔王の『-zero color- 』に対抗できる術を唯一持っていた。 目には目を歯には歯を、炎には炎を。 ちなみに、俺の自宅には唯一にして完全無欠の防犯機能が存在する。 あの棚の上から三段目に。 ―――ドンッ 自称司祭のクソ野郎がマッチの箱を開けるとマッチのが爆発、桃色の炎が男の頭部を包む。 ――バタッ 男はその場で倒れ、寝息を立て始めた。
/53ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加