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「・・・」
「なんだよつれねーな。いいよ俺一人で飲むから。おお神よ、よろしければこのワインに合う漬物をひとつお恵みください。あれ?」
強盗は装束を脱ぎながら暖炉の火が落ちていることに気づく。
「おいおい、なんか寒いと思ったらよぉ。おい、マッチはどこだい」
俺は再び顎で示す。
「そこの棚の上から三段目に入ってる」
ところで初代魔王、つまり俺の親父が打ち滅ぼした青年は赤・青・黄の三色の炎を操った。
それらを組み合わせた炎『-zero color- 』和訳を【無色の炎】。
他の魔術をその名の通りゼロ、最初からなかったかのように無効化する。
魔王が魔王たる絶対的力を示した最も有名な炎である。
「ふん、やけに素直になったな。そりゃお前も寒いのは勘弁だろうし当然だな。まあこれをきっかけに仲良くやろうぜ、縄はまだほどいてやれんけどな。安心しろ俺も鬼じゃねぇ司祭のはしくれだ、そのうち解いてやっからよ」
そういって自称司祭、本性は強盗の男は棚に向かう。
目に物見せてくれるわ。
魔王の炎『-zero color- 』には王国の兵士も王立魔道書院もギルドも手を焼いた。
正確には焼かれたのだが、なにはともあれ手も足も出なかったのである。
そこに英雄登場、親父だ。
南の島の田舎出身の親父が魔王の『-zero color- 』に対抗できる術を唯一持っていた。
目には目を歯には歯を、炎には炎を。
ちなみに、俺の自宅には唯一にして完全無欠の防犯機能が存在する。
あの棚の上から三段目に。
―――ドンッ
自称司祭のクソ野郎がマッチの箱を開けるとマッチのが爆発、桃色の炎が男の頭部を包む。
――バタッ
男はその場で倒れ、寝息を立て始めた。
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