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「最初におかしいと思ったのはお前が賢者の証である宝石ヒスイを身につけていなかったことだな。知恵と忍耐力でその地に安定と平穏をもたらす者を賢者っていうんだよ。全ての賢者はその象徴であるヒスイを身につけることを義務化されているし、なにより賢者って人種はそれを誇示したがるからな」
なるほど。この男、見かけ、いや暴挙の割に意外と知識が豊富らしい。しかも、
「それに加え、魔法陣と眠りを誘う魔術を駆使したトラップ。そして、暖炉だ。普通薪に火をつけるには紙とかの媒体を通すもんだよ、マッチから直接薪に火は点かねぇからな。まあ・・・」
頭がキレるらしい。それに対して、
「魔王3世ってのはカマかけてみたんだよ。何年か前『白銀の茨』に魔王2世の息子が入って行ったってのを聞いてたからな。お前の反応の分かりやすいこと、ぶっはは」
俺の愚行により、俺が『魔王の血』をひいていることがばれてしまった。
それにしてもシルフの反応を見る限り、『魔王の血』は世間では既に忘れかけられた言葉であることを察する。
昔、俺が子どもの頃『魔王の血』をひいていると分かった時の人々の反応といったらそれはもう。本物の魔王に対するそれとなんら変わらないのではないかと感じた程だった。
男達は武器を取って戦うし、母親たちはこぞって子どもだけは助けてと懇願してくるし、俺にはそんな気も力もないってのにね。
「世間は『魔王の血』どころじゃねぇのさ。今は戦時下だ、お前よりもよっぽどこえぇもんが王国を取り巻いてる」
「この国は戦争中なのか?どこと?」
「まあ俺にもこんな北の奥地に住んでる魔王3世にも関わりのないことさ。ところで、さっきの取引の話に戻る前に言っておくが、お前への懸賞金はまだ生きてるからな」
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