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俺はシルフを睨みつける。 「おいおい、俺に睨みを利かせたって意味ないぜ?それより、ビジネスの話をしようぜ。俺はお前のことを他言しねぇからお前は」 縄を解いて村までの道案内くらいしか俺には提供できるものがないが、そっちが約束を守ってくれるなら俺は苦汁を飲む覚悟くらいはここに戻ってくるまでの間にできていたが。 「俺の仕事を手伝え」 どちらにしろ、俺はこいつの言いなりになるしかないのだ。 ★ ★ ★ 北の大地の更に北の奥地『北方領土グッドラック』は一応『オリーズ王国』の領土とされている。 しかし、刑事事件はおろか民事事件とも無縁で人口よりもキツネの数の方がよっぽど多いこの北の最果ては、国からほとんどほったらかしの状態である。 グッドラックという地名もそんな状態を体現している。 幸運を――いいことあるといいね。 皮肉が効いている。 なんて無責任な国だ。 そんな世間から、時代の流れから置いてきぼりにされた『北方領土グッドラック』には有名なモノが三つある。 『白銀の茨』と『漂流観測所』。あと一つは忘れた。 前者はもはや負の財産としてのイメージが定着しているが、後者はこの国に少なからず貢献していると言えよう。
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