【prologue】

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暖炉の暖かさと安楽椅子の織り成すリズムでいつの間にかウトウトとしていると、後方の扉が叩かれる。 ――ドンドン びっくりしたのは、急だったこともあるけど何よりこの家に尋ね人が現れたことに驚いた。 【カイン=イースト】に用のある者がまだこの世にいたとは。王国の兵士とは数年まえから遭遇していないし、この場所を知られるようなヘマをした覚えもない。 実は、ほんの数年前まで、俺は王国の兵士に追われていた。 一国民が王国直属の兵士に追われるなんて滅多にないことで、例外としては歴史に名を残す大悪党くらいのものである。 先に言っておくが俺は生まれてこの二十数年で兵士に追われるような悪事を働いたことはない。 潔癖とは言わないが、人並み程度の質と量のそれである。 原因は俺にある。 ややこしい言い方をしたが、先に宣言しておく。俺はそういう性格なのだ。 正確に言うと、俺の体を流れる血にある。 俺に流れる『-heroic blood- 』が俺に巻き起こった諸悪の原因だ。 和訳を英雄の血。 ドンドンドン!! 優雅とは程遠いノックが家に響いていることから、俺の家があまり大きくないことはお分かりだろう。 それほど狭くもないけど。
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