【prologue】

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正体を見せたな。偽善者というのは撤回してやろう。 馬鹿者め。 「では5歩さがれ。そうすれば扉を開けると約束しよう」 「あぁ、ありがとうございます。あなたは現人神(あらびとがみ)ではなかろうか、オーマイゴット。下がります、下がりますとも」 こいつ、寒さと混乱のあまりキャラが崩壊しだしたな。 ザクザクと雪の上を歩く音が五つ聞こえたところで俺はドアノブを回し扉を押し開ける。 いやぁ、田舎者ってのは理屈では分かってるんだけど結局こういうのに油断して引っかかっちゃうんだよな。 理屈ばかりこねる社会的弱者である高齢者となんにも変わらない。 後悔先に立たずである。 ______【閃光球】 「release - L . E . D -」 【- L . E . D -】―――和訳は閃光球。主に目晦ましに用途を見出すことが多い光属性の魔法である。 「ぐわあ!!」 「駄目だよぉ、簡単に戸開けたらぁ」 無様にも目がくらんだ俺は、自称司祭改め強盗詐欺野郎に捕われの身で自己紹介することとなったのである。 情けない。 「ヒポタマス=ボウだ」 「ふーん、だっせぇ名前」 もはや司祭らしさのかけらもない口調で、うちの食糧を食い漁る強盗。 ああ、それは俺が少しずつ食そうと楽しみにしていたチーズ。近くの牛さんに分けてもらったミルクを試行錯誤の末、完成させたのに。もう牛さんは引きこもって出てこないんだぞ。 しかしながら思うのである。こいつ、なんでこんな北の奥地に? 「それは教えられねーな。ここでお前を殺してもいいってんなら一部始終話してやってもいいんだけどよ。ワインある?」
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