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「・・・ない」
チャッ――
おいおい、そんな物騒なもん向けないでくれよ。しかも銃口が冷えてオデコがつめたいよ。
俺は拳銃を額に押しあてられながらも強盗を睨みつけた。
「まあそんなにツンケンすんな。仕方ねーよ、お前が悪いんじゃない。光魔法を自在に扱える俺様に目をつけられたのが運の尽きってことで納得しな。ワインはどこだ?ヒポタマス」
そんな名前一回聴いただけでよく覚えられたな、ほめてやるよ強盗。
何故俺が偽名を使っているかというと、それは愚問。
俺がカイン=イーストということを隠したいから。
表札にも『ヒポタマス=ボウ』と記している。
俺が偽名を使ったり、数年前まで王国の兵士に追われていたり、こんな北の奥地で細々と捻くれて暮らしている原因、根っこはさっきも言ったがこの血『-heroic blood- 』にある。
ここ『オリーズ王国』には30年前に魔王がいた。
俺はまだこの世に生を受けてもいない頃の話。
魔王が現れたのはオリーズ王国の中心都市『王都フロントパレス』のレストランで起きた小火騒ぎ。
直ぐに消防が駆け付け鎮火したらしい。
なんてことはない出来事。
しかし、それがいまや歴史の教科書に載り、確実に1学期中間テストに出題される『F(irst) F(lame)事件』である。
すぐに消防が小火の原因を調査した。
建物内の一部が少し焦げた程度の物損被害。それは、テーブルクロスですら完全燃焼できないのではないかという程度のもの。
しかし、死者3名。
消防は、その威信にかけても原因を解明しようと躍起になって火元を調べた。
しかし、タバコ、放火、粉塵、それらあらゆる可能性を探れば探るほどに迷宮入りした。
それはそうだ、火元は科学的な根拠ではなく魔術に依存したものに原因があったのだから。
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