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急ぎ足で一番手前にある個室のドアを目指した。
トイレのドアは内側に開いていて誰も先客がいないことを示している。
脇の下から冷や汗が流れる。もう少しだ。我慢しろ。佐伯一郎は我が儘な子供を諭すように自分の便意に語りかけた。
ドアを閉め、施錠し、ベルトを緩め、ズボンを下げ、腰を便座に下ろす。
一流のコックが注文された料理を手際よく捌くように一郎は一連の作業を終えた。思わず安堵のため息が漏れる。間に合った。
一郎は目を閉じて胸を撫で下ろした。安心すると同時に一発放屁した。照り焼きにすると美味しい魚の名前のような音だった。
トイレの内装は全面タイルなので思った以上に響き渡る。まあいい。こんな時間だ。誰もいないだろう。一郎は続けて三匹同じ魚を並べた。
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