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一郎は一息ついてワイシャツの胸ポケットから煙草を取り出した。 外出先のトイレで喫煙するほどマナーに疎いわけではないが、大人にあるまじき粗相の危機をやり過ごした安堵から油断したのだろう、人気のないサービスエリアでしかも夜ふけという状況が一郎を散漫にさせた。 一郎は半ば無意識に煙草を咥え、使い捨てライターで火を点ける。肺に煙を数秒貯めてから開いた上空に向かって紫煙を燻らせた。 「禁煙ですよ」 隣の個室から注意された。誰もいないと決めつけていた一郎はその声に驚きながらも煙草をタイルに押し付け火を消した。
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