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後方から聞こえる丁寧な口調が慇懃無礼に響き一郎は苛ついてきた。正論だけに余計に腹が立つ。 「ちゃんと持って帰って車の灰皿に捨てますよ。何度も謝っているでしょ。しつこいなあ」 「それが謝る態度ですか? いい大人が恥ずかしい」 一郎は溜息をついた。何を言っても無駄だろう。このままでは喧嘩になってしまう。相手は正論で攻めてくる。元を辿れば自分が悪い。ここは我慢してやりすごそう。自分の戦う相手はまだ暴れ足りない便意だ。隣の男はそのうち出て行くだろう。
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