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「また竜!?」
カラックがアシェルに聞き返す。
「ええ。また直ぐに来ます」若者は頷いて、周囲の人々を見回した。「でも大丈夫です。夢見の竜とは闘う必要はありません」
「夢見が来ると、なぜ分かる」
タニヤザールが眉をひそめる。
「おそらくまた眠らせに……あの竜を眠らせたのが、もともとは夢見だからです。でもいなければ、多分すぐ行ってしまうと思います」
巡らせたアシェルの視線が、竜の檻の陰にいた竜使いを捉えた。逃れる間も与えず走り寄ると、相手の腕を取って強く引き寄せる。
「今、目覚めてはならない竜をなぜ起こした!?」
竜使いは掴まれた手を振り払おうとしたが、それが叶わないと銀の燃える目で見返した。
「お前が邪魔をしたのだろう!!」亀裂の入った笛を掲げる。「壊れさえしなければ、あのまままた眠ったのだ! お前が笛を壊した!」
アシェルが目を細めた。
「本当にあの笛で、竜を使えると思っていたのか? あんなもので竜が動くと思っているのか?」
竜使いは喉奥で唸りを上げ、憎悪を込めた歪んだ言葉で襲いかかった。
「だったら、お前は竜を使えるのか!?」
「使える……?」
聞き返したアシェルの瞳が、竜使いを逆に絡め取る。青の深みの奥底へと引き入れられ、竜使いは驚愕に再び身を引こうとしたが、若者の力がそれを許さない。
「そんな……!」
目を逸らし両手で顔を覆う竜使いに、アシェルは厳しい声を放った。
「オフィル。君が竜を使おうとしたのは、何のためだ?」
その時、半月へ向かって叫び声が上がる。
「竜がきた!!」
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