第4部 2.怒りの日

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   彼らの息を飲む中、夢見の竜は銀の滴を瀑布のように煌めかせながら、庭園の広場に降り立った。その頭の高さは、王宮の三階の窓に達しようか。 「……でけえ」  カラックは再度唸った。  地に足をつけた竜が、暫く何かを探すように長い首を揺らめかせる。やがて、月色の眼差しが地の人間へと向けられ、彼らの上を一巡すると、エルシャロン全ての者の上に重い眠りの帳が降りてきた。エナムスが喉奥で苦しそうに呻いて膝をつく。彼に縋りついていたアシェルも、闇の深みに引き込まれていった。    *  *  *  笛をふくと竜が面白いように動いた。好奇心に満ちた黄色い目が、その音をきくと嬉しそうについて来る。  皆が言う。 ――オフィルはすごい。 ――オフィルは竜使いの天才だ。  では、あの子は何だったの?  笛も無く竜が喜んでいた赤毛の子。 ――だめ! だめよ! その子を追わないで!  大人達はあの子に石を投げた。灰色の肌をした人と村から出され、みんなが追って、その後どうなったか分らない。  訊いても誰も答えなかった。 『竜殺し』?  あの子が?  竜の前でただ笑っていた子が?  あの子のようになりたいと、こんなに思っているのに!    *  *  *
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