88人が本棚に入れています
本棚に追加
彼らの息を飲む中、夢見の竜は銀の滴を瀑布のように煌めかせながら、庭園の広場に降り立った。その頭の高さは、王宮の三階の窓に達しようか。
「……でけえ」
カラックは再度唸った。
地に足をつけた竜が、暫く何かを探すように長い首を揺らめかせる。やがて、月色の眼差しが地の人間へと向けられ、彼らの上を一巡すると、エルシャロン全ての者の上に重い眠りの帳が降りてきた。エナムスが喉奥で苦しそうに呻いて膝をつく。彼に縋りついていたアシェルも、闇の深みに引き込まれていった。
* * *
笛をふくと竜が面白いように動いた。好奇心に満ちた黄色い目が、その音をきくと嬉しそうについて来る。
皆が言う。
――オフィルはすごい。
――オフィルは竜使いの天才だ。
では、あの子は何だったの?
笛も無く竜が喜んでいた赤毛の子。
――だめ! だめよ! その子を追わないで!
大人達はあの子に石を投げた。灰色の肌をした人と村から出され、みんなが追って、その後どうなったか分らない。
訊いても誰も答えなかった。
『竜殺し』?
あの子が?
竜の前でただ笑っていた子が?
あの子のようになりたいと、こんなに思っているのに!
* * *
最初のコメントを投稿しよう!