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「……、私を食べてくださいの方が適切だと思うぞ」
目のやり場に困るように五十嵐がいう。
「わっ」
今更叫んでも遅いのだが、何も身につけていないのに気がついて慌ててベッドに潜り込んだ。
「さ、先に言ってくれればいいのに」
「難しいこというな。……しかし、ありがとう」
五十嵐は笑いながら包みを開けると中に入ったトリュフをつまんで口に放った。
「手作りではなさそうだが」
一言多い。だが間違ってない。
「高かったんですよ。それだけなのに二千円するんです。味わって食べてください」
「もちろん」
そういうと五十嵐がベッドに座る。分かってはいたが再び五十嵐の顔が降ってくる。
避けようとすれば出来たに違いないが、この通例となった儀式を理子に阻めるはずなく、甘いカカオの香りに大人しく浸っていた。
カカオの香りに抱かれて 完
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