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「京はずるい……」
「泣いたら組み敷くぞ?明日からまた戦技の訓練だろう。今日は無理をさせたくないんでね。お願いだから誘うようなことはなしだ」
「どっちが……です」
昨日あれだけ組み敷いた男のセリフだろうか。泣きそうになっていた理子も呆れながら笑う。五十嵐なりの優しさなのだ。
「よし、じゃあ起きるか。まだ飛行機の時間まではまだあるし、途中で朝飯を食おう。何がいい?」
起き上がった五十嵐はTシャツを拾い着替える。黒いTシャツ。元々、筋肉質な五十嵐が着るとタイトなそれに浮かび上がるものは芸術といっていいほどの出来栄えだ。
黒?
「ああ!」
黒で思い出した理子は持ってきたバッグに駆け寄る。
「なんだ、いきなり」
既に着替え終わった五十嵐は不思議そうに傾げた。
「今日、バレンタインでしょう?忘れてもって帰るところでした」
手に持っていたのは、簡素なラッピングが施された箱だ。無論、中はチョコである。
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