出発

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1982年3月― 平井 忍、4歳。 彼女は今、最愛の人、母の眠るお墓の前で母の分も幸せになる決意をしていた。 この日は天気に恵まれ、空気が澄んでいた。 朝から親戚や友人が集まり、母の冥福を祈り送ろうとしていた。 「みなさん ありがとうございます。」 父が深々と頭を下げた。 その時、母が 「忍、生きるのよ。 うんと生きるのよ。 そして幸せになるの」 そう言った気がした。 忍が「幸せになるの。」という意味を知る事になるのはずっと後の事だった。
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