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そして桜花の中で二年一組が目立っている理由は、近年稀に見る学力の高さからだった。
一組は基本的に学力が高いが、その年の二年生は歴代の一組の中でもなかなかの優秀ぶりを発揮しているのである。
教師が面食らうほどに。
そのクラスの担任兼数学を任されることになった新任教師倉本真一(クラモトシンイチ)は心を踊らせて向かっていた。
新任の自分がまさか最優秀クラスを任されると思わず、ある意味去年いきなり辞職した先代の先生に感謝した。
にやける顔を抑えながら教室の扉に手をかける。
扉の向こう側は春休みの思い出話などでざわめきたっていた。
大きく深呼吸をして扉を開ける。
――ガラッ
その瞬間あれだけ騒いでいた生徒たちが静まり返った。
そして口々に呟き、喋り出す。
「誰ですかー?」
「若ー。」
「前の先生は?」
そして品定めするように真一の全身を見る。
当たり前のようなその光景に、何故か真一は悪寒を感じた。
理由など存在しない、懐かしいような恐怖。
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