二年一組

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「そこ。山本……和一(ヤマモトカズイチ)か。椅子を蹴るな。」 和一という髪が茶色いその男子生徒はムッとした顔で返事をする。 「……フン。」 「返事は、はいだ。」 「……。」 真一の一言で和一は余計機嫌を損ねてしまったようだ。 授業を進めていくうち、そこかしこで携帯をいじる音がする。 真一は気付いてはいるが、堂々と弄っているわけではないし、それくらいは黙認する。 「じゃあ問11、これを……1号、……飯山愛(イイヤマアイ)。」 その声で立ち上がったのは垂れ目が印象的なダークブラウンの髪のボブの今時の女生徒だった。 愛が立ち上がって歩き始めた頃携帯のプッシュ音が速くなる。 キュッ...キュッ... カチカチカチカチ 『今回の』 キュッ...キュッ... カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ 『対象の馬鹿は』 カッ...カッカッカッ... カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ『調子にのった勘違い教師』 カッカッカッカッカッカッカッカッカッ カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ 『二組上がり馬鹿担任』 カッカッカッカッカッカッ... カチカチカチカチ...カチ 『倉本真一』 「終わりました。」 その瞬間その生徒のメールは打ち終わり、クラス全員の携帯に送信された。 「よし、正解だ。」 クラス全員の視線が真一に集まる。 「席に戻っていいぞ。」 その視線に真一は気付かない。 チャイムが鳴り響く。 「これで俺の初授業は終わり!みんなやっぱ頭いいなー。俺感動したよ!」 今、真一は対象の人物になった。
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