テーマ『猫』

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 寒さも和らいだ、2月の下旬。 制服姿の少年と少女の二人が、アスファルトの道を歩いていた。  ふいに、少女は歩みを止める。 「猫じゃらし。」  そういうと、彼女は真横へ一直線に歩いた。 「えっちょっと、勝手にどこ行くの?」  少年は、突然歩きだす少女の腕を掴む。 「いや、だって永治。あっこに猫じゃらしが……。」  自分が行こうとしているところを指差し、腕を引っ張る彼を見て永治と呼んだ。 「夕架さんよぉ、猫じゃらしなんて珍しくないだろ?」 「珍しくないけど、猫じゃらし欲しい。」  夕架と呼ばれた少女は、子供みたいな口調で真面目な顔をしている。 「あんたは猫か! もうすぐ高校を卒業する身の者が、猫じゃらしなんて欲しがるなよ!」 「猫じゃない。永治、私猫じゃらし欲しい。」  彼女は、長い髪と同じ黒色の目で永治をじっと見た。 「……分かったよ。取ってきなよ、猫じゃらし。」  頑なに意思を曲げない夕架に、諦めて永治は手を離す。 「うん。」  永治の言葉にコクリと頷いて、夕架は歩いていった。 そして、猫じゃらしを一つ取ると、ニコニコと嬉しそうな顔をして永治の元へ戻ってくる。 永治は、夕架が戻ってくると同時に、再び前へ歩きだした。 「ねぇ夕架さん、その猫じゃらしどうするの?」  自分の隣を歩いている夕架に問い掛ける。 「しばらく遊んで、いらなくなったらポイする。」  永治の問いに、考えることもせず夕架は答えた。 「なっ……! あんだけ欲しがってたのに!?」 「人間ってそんなもの。」 「いや、夕架さんの性格は猫そのものだよ。」  猫じゃらしで遊んでいる彼女を見て、永治は苦笑した。 「じゃあ、ニャー。」 「何がじゃあなの!?」  そんな少し変り者の夕架に、永治はずっと振り回され続けるのであって……。       -fin-
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加