7/7
前へ
/7ページ
次へ
美裕を埋めてから一週間経ってさ。 俺が「自主しよ」って言ったら、「それだけは止めて」って泣き始めてさ。 それでも行こうとしたら、お前台所から包丁取り出して。 めっちゃ焦ったよ。 まぁ、今は大分落ち着いたけどな。 「うっ…。うぅ…」 涙が、どんどん溢れる。 俺の、美紀への思いが流れていくようだ。 涙は、とめどなく溢れる。 「うぅ…。美紀ィ…」 こんなに、悲しいとは。 そっと、髪を撫でる。 『あの時』と変わらない、綺麗な髪。 今思えば、この髪に惚れたんだよな…。 綺麗だよ、美紀。 もう、あの楽しい日々は返ってこないんだ。 なぁ、美紀…。 『ピンポーン』 ドアのチャイムが、しとしと降り注ぐ雨と重なって、とても心地良く聞こえた。 重たい足取りで玄関に向かう。 ドアを開けると、2人組のスーツを着た男たち。 さよなら、美紀。 さよなら、美裕。 お前とは、お別れだ。 来世、また一緒になれたら…。 そん時は、浅草寺に行こう。 子供も、連れて―― 章裕の目から、これから一生流す事はないだろう最後の《涙》が頬を伝った。 「渡辺章裕だな。渡辺美紀を殺害した容疑で逮捕する」 《涙》 fin
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加