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美裕を埋めてから一週間経ってさ。
俺が「自主しよ」って言ったら、「それだけは止めて」って泣き始めてさ。
それでも行こうとしたら、お前台所から包丁取り出して。
めっちゃ焦ったよ。
まぁ、今は大分落ち着いたけどな。
「うっ…。うぅ…」
涙が、どんどん溢れる。
俺の、美紀への思いが流れていくようだ。
涙は、とめどなく溢れる。
「うぅ…。美紀ィ…」
こんなに、悲しいとは。
そっと、髪を撫でる。
『あの時』と変わらない、綺麗な髪。
今思えば、この髪に惚れたんだよな…。
綺麗だよ、美紀。
もう、あの楽しい日々は返ってこないんだ。
なぁ、美紀…。
『ピンポーン』
ドアのチャイムが、しとしと降り注ぐ雨と重なって、とても心地良く聞こえた。
重たい足取りで玄関に向かう。
ドアを開けると、2人組のスーツを着た男たち。
さよなら、美紀。
さよなら、美裕。
お前とは、お別れだ。
来世、また一緒になれたら…。
そん時は、浅草寺に行こう。
子供も、連れて――
章裕の目から、これから一生流す事はないだろう最後の《涙》が頬を伝った。
「渡辺章裕だな。渡辺美紀を殺害した容疑で逮捕する」
《涙》 fin
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