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「ギャー!!助けて…痛いっ!」
「やめろ…来るな…うわぁーー!」
「死ねよ」
俺は今何を見ている?
目の前で起こっている事に思わず目を背けた
あれは翔……
いや翔なのか?
違う、翔が二人……
翔がここまで残虐に人を……
「楽しいだろ?泣き叫ぶ声が聞けて……聞きたかったんだろ?もっと聞かせてやるよ」
「やめろ……来るな…ギャーー!」
うっ……
思わず口を押さえて床に膝をついた
「まだまだこれからだろ?死んでもなお苦しませてあげる」
紅い血に染まりながら冷酷に笑う翔も美しいと感じてしまった
動けない俺を一瞬見つめ、唇に飛び散った血を舌で舐めながら血みどろの死体と共に鏡の中に消えてしまった
しかし、翔は鏡の前に居る
「見られたみたいだね」
いつもの翔だ
「翔……今のは」
「幻滅?それとも恐怖?今の和海の目には俺はどんな風に映っているのかな………」
「私の目には天使の翔しか映っていない」
嘘ではない
嘘をついてもすぐに見破られてしまう事はわかっていた
「ありがとう、和海」
そう言って笑う翔はやはり天使のようだった
「教えて欲しい……今のは」
「もう一人の俺……昔から孤独だった俺の友達は鏡の中に居る俺……ずっと俺の傍に居てくれた……そして俺だけには優しい鏡の中の翔が言った…天使は俺、悪魔は鏡の中の翔……裁くのは俺……罰を与えるのは鏡の中の翔……そうやって生きてきた……俺達は二人で一人ではなくちゃんと二人存在している」
「………まさか…と言いたいところですが、目の前で見せられては」
「神でも何でもない俺が人間を裁く事自体が罪……だけど目に見えない事が今の世の中にはたくさんありすぎる……弱者は泣くしかないんだ」
「私は何も見ていません」
「ありがとう……偽善者面をするつもりはないんだ……だけどここに来てすぐに感じた……辛い思いと悲しみの感情が俺に伝わって鏡の中の翔が裁けと囁いた」
「翔」
「和海を巻き込むつもりはないんだ……だから俺にはもう構わないで……」
「辛かったですね」
「和海………」
心が欲しいと言った翔の気持ちが痛い程伝わるのは、やはり俺達が似た者同士だからなのか
翔を抱きしめながらそんな事をふと考えていたんだ
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