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バスルームからタオルを頭から被った翔が出て来た 「髪を乾かさないと風邪をひきますよ」 「びっくりした」 「それに、濡れた体のまま服を着ましたね?」 「冬矢が待ってるから急いでたんだ」 「待ってる?」 「夕食を一緒に食べるから」 「一緒に」 「そう言えば和海が食事をしているのを見た事がないな」 「私は部屋で」 「一人?」 「ええ」 「どうして?」 「別に意味はありません」 「なら一緒に食べようよ」 「冬矢が嫌がりますから」 「大丈夫、ね?」 「………………」 腕を掴まれたまま、食堂に連れて来られてしまった 「えと……なんかみんなに睨まれてるような」 「気のせいですよ」 「んじゃ、冬矢を呼んで来るから絶対そこにいてね」 「いなかったら?」 「泣く」 「クスッ、わかりました」 本当に泣かれても困るが、冬矢と一緒に食事か…… 何年ぶりだろう 「会長、ここで食事をされるなら一緒に」 「僕と一緒に」 「いえ、先約がありますので」 こういうのがウザいから部屋で食事をしていたのに、何故俺は言われた通りに待っているのだろう 「お待たせ!」 「…………和海」 「はい、冬矢はお茶ね」 「………………」 「和海は俺と食事を取りに行こう」 「はい」 「冬矢は魚以外だね?」 「ああ」 「わかった」 あの冬矢がまるで別人に見えた 「魚嫌いなのを?」 「うん、最近知ったんだ……それまでは無理してたみたい……アレルギーならちゃんと言えばいいのに」 「冬矢は昔から魚アレルギーなんですよ」 「うん、知らなかったから俺無理矢理食べさせてたんだ」 「翔の言うことなら聞くみたいですね」 「う~ん……でも危うく殺してしまう所だった」 「魚アレルギーと言っても冬矢の場合は死にはしませんよ」 「和海は大丈夫?」 「はい」 そんな話をしながら翔は夕食を二人分持ち、テーブルに戻った 「冬矢はチキンカツね」 「サンキュー」 「俺は焼き魚と肉じゃがと豚汁~!美味しそう」 「和海は魚の骨を取るのが上手いぞ」 「マジ?」 「やりましょう」 「ありがとう」 驚いた 最初は少し動揺していたが、冬矢は普通に会話してくれている これでよかったんだ
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