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「一緒に食事をするのは久しぶりですね」 「だな」 「冬矢は昔、魚の骨を引っ掛けて死にかけたんですよ」 「お前、その話は」 「もしかして、魚アレルギーって言うのは」 「それ以来、魚を食べると拒絶反応を起こすんだ」 「だから和海は魚の骨を取るのが上手いんだね」 「えっ?」 「…………出来ましたよ」 「ありがとう」 驚いた 翔には気付かれてしまったみたいだ 俺は昔、冬矢の為に魚の骨を取る練習をした事をふと思い出してしまった 「冬矢、そろそろ兄弟に戻りませんか?」 「………兄弟か」 「私は兄として冬矢を尊敬しています」 「やめてくれ、尊敬されるような兄じゃない」 「なら尊敬される兄になればいいんだよ」 「翔……」 「今からでも遅くはないよ」 「………だな」 「ええ」 「でも、ホントにそっくりだね……髪型が違うから見分けがつくけど」 「翔は髪型が同じだったらわからないのか?」 「う~ん……」 「お前……」 「クスッ、正直ですね」 久しぶりに楽しい時間を過ごした 翔のおかげで冬矢との距離も縮まったような気がした もう大丈夫 俺は冬矢を必要以上に求めたりはしない 「和海」 「はい」 「翔を泣かせるような事をしたら」 「しませんよ」 「わかった、お前を信用する」 「ありがとうございます」 「てか、和海ってそんなに危険人物なの?」 「それは本人に聞け」 「和海、そうなの?」 冬矢の奴…… 「えっとですね……確かにちょっと前までは来る物拒まずでやりまくりでしたが今は……あの…翔?」 「お前、正直に言いすぎだ……アホ」 「えっ?」 「や、やりまく……」 「翔、豚汁こぼれてる」 「今はもうしていませんよ……豚汁が……」 「てか、ここ女子いたっけ?」 「えっ?」 「翔……」 まさかとは思うが、翔は肝心な事に気付いていない? いや、しかし今日は男に犯されそうになったはず う~ん 「翔、男同士でもやるときはやるんだよ」 「ですね」 「………何となくそう思ったけど……どうやるのかな~って」 「ぐっ」 「それは……」 「もういいから食べろ!冷めるぞ」 「わかった」 これが素なのか 芝居をしているのか しかしこれが本当の翔なのかも知れない 翔は天使なのだから
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