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翔が部屋を出て行った 干渉するつもりはないがやはり気になる いつも眠ったふりをしているのは翔に気を使わせない為 たまに部屋を出て行っても必ず戻って隣で眠ってくれる だが今日は何となく気になった 翔の後をそっとつけて行くと、和海の部屋に入って行った 「和海の部屋……」 そっとドアに近付き中の様子を探ろうとして止めた 和海を信じよう プリントを持っていたからきっと宿題を教えてもらっているのかも知れない 本当はドアを開けて翔を連れ戻したいが、それは出来ない 俺は翔の恋人ではないし 束縛する事などしてはいけないから 溜息をつき部屋に戻り、いつものように翔が戻るのを待っていた 窓から見える月が悲しく見えるのは、きっと隣に翔が居ないから……… 「おじゃまします」 「どうぞ」 「あっ……この香り」 「ああ、百合ですね」 「そっか、和海は百合の香りなんだ」 「百合の花は綺麗なのに何故か悲しいイメージがありませんか?」 「うん」 「私には明るい向日葵は似合いません」 「俺、百合好きだよ……和海みたいな花だよね……悲しい意味じゃなくて、気高くて凛としてる」 「翔は……やはり向日葵ですね」 「俺は雑草」 「何故自分をそんなに……貴方には雑草は似合いません」 「でも向日葵には程遠い」 「翔……」 「俺に似合う花は彼岸花かな……真っ赤な血の色」 「彼岸花の別名は曼珠沙華……とても綺麗な花です」 「和海がモテるのがわかったかも」 「えっ?」 「和海の言葉はなんか癒される」 「翔にしか言いませんよ」 「どうして?」 「翔だからです」 「それは……」 「プリントを」 「うん」 これ以上雰囲気に飲み込まれるのが怖かった 自分を抑えるのに必死だなんてちょっと笑えた 翔に宿題を教えながら、何度髪に触れたい衝動にかられたか 「翔はやはり賢いですね、正解です」 「やった!」 今なら頭を撫でても大丈夫だろうか 「よく出来ました」 頭を撫でながら微笑んだ
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