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いつものように翔を起こすのが俺の日課 気持ち良さそうに眠る翔を起こすのはちょっと気が引けるが仕方がない 「翔、早く起きないと朝食抜きだぞ」 これが一番効果的 「んっ……ふぁ~、おはよ」 「おはよう」 毎朝、ベットの上で天使の翔が起き上がる 窓から射し込む柔らかな陽射しを浴びて翔の背中に羽が生えたかのように見えるのは気のせいではないはず まるで光の中から生まれ出たような錯覚に陥りながら目を細めて眠そうな翔の頭を撫でた 「早くしろよ」 「うん、あっ…冬矢」 「何だ」 「あの……ごめんなさい」 「何が?」 「昨日、宿題を和海に教えてもらったんだ……それで夜中にベットに潜り込んだから起こさなかったかなって」 「全く気付かなかったな」 「そか…んじゃ顔洗って来るね」 「ああ」 安心したような顔で部屋を出ていく翔に背中を向けながら苦笑した 黙っていればいいものを……… 正直に話されてしまったら何も言える訳がない 和海と和解した以上、無理矢理引き離す訳にもいかない 「参ったな……」 カーテンを開け、窓から見える針葉樹を見つめた 翔のおかげで針葉樹の歯先のように尖った俺もまともな人間に戻れたような気がする しかし今度は違う不安に襲われていた 俺達は双子だからわかる事がある 和海も翔に惹かれるのは時間の問題だろう そして一度は愛し合った俺達が今度は憎しみ合う結果になるかも知れない そうなったとしても、翔を渡すつもりはない 「お待たせ、行こ」 「ほら、髪が濡れてる」 「そうだ、和海も一緒に」 「………翔が誘いたいなら」 「だって、みんなで食べた方が美味しいよ」 「だな」 そんな笑顔で言われたら断る事は出来ない 部屋を出て廊下を歩いていると和海が階段を降りようとしていた 「あっ、和海!」 その声を聞き、ゆっくり振り返る 「おはようございます」 「おはよ!行こ」 「えっ?」 「朝食だよ」 「私は……」 「ダメだよ?朝はしっかり食べないとね」 「…………ほら、行くぞ」 「和海!」 「はい」 やはり翔には逆らえないか…… 腕をガッチリ掴まれている和海が羨ましいとさえ思えてしまった
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