29/32
1787人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
「今日は早く寝ろよ」 「うん」 冬矢は何も言わずに俺の頭を撫でた 部屋に戻り、明日の用意をしながらまたボンヤリしていると、突然冬矢に抱きしめられた 「どうしたの?」 「ごめん……何だか翔がすごく遠く感じたから」 「冬矢」 「翔……俺……」 「ん?」 「いや、何でもない……そうだ、明日はバレンタインだな」 「バレンタインか」 「もちろんチョコくれるよな?義理チョコだけど」 「あはっ、義理チョコじゃなくて友チョコでしょ?冬矢は大切な友達だよ」 「じゃ、和海は?」 「えっ?」 「和海にも渡すんだろ?」 「………和海は…きっとたくさんもらうだろうし」 「俺ももらうけどね」 「あははっ、だね」 バレンタイン…… チョコを渡してまた友達としてやり直せるかな もう何も求めなければいいんだ 急に和海から離れてしまったら冬矢も変に思うかも知れないし、余計な心配をかけたくはない 「お風呂行ってくる」 「わかった」 そっと財布をポケットにしまい、バスルームに向かうふりをして急いでチョコを買いに行った 冬矢には甘くないチョコ 和海には薔薇の形のチョコ やはり和海のチョコを選ぶのに時間がかかってしまった 「ホントに俺は罰当たりだな」 あんなによくしてくれている冬矢のチョコより、ムカつく奴のチョコに時間をかけるなんて もう忘れよう 終わった事を考えていても仕方がないんだ
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!