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誰かがノックしている いや、しているような気がする 今の俺は、頭の中がからっぽ 何も考えられない 周りも見えない 見たくない 窓際に座り、ボンヤリ暗い部屋の空間を見つめていた 「入るぞ」 「…………冬矢」 「成る程ね」 「………………」 「お前にも心当たりがあるみたいだな」 「やはり冬矢はごまかせませんね」 「正直、翔の様子がおかしいのはお前が原因だとは思いたくないよ」 「翔……の様子は?」 「話をするのが先だろ」 「冬矢……」 やはりごまかせないか これだから双子は厄介だ 小さな心の動揺も隠せない 諦めて暗闇の中で静かに話をした 「翔の為にしたはずが自分から地雷を踏んでしまいました」 「………俺はお前のように賢くないからわかるように話せ」 「手を出した奴に脅されたんですよ……この私が……クスッ」 「脅された?」 「もう何もしないと言ったら写真を翔に見せると」 「……大体はわかったがお前の口で最後まで話せ」 「私は翔にその写真を見られたくなかった……だから要求を受け入れてそいつと……そして翔が部屋にやって来て……」 「写真ではなくリアルに見られた訳か」 「………はい」 「和海」 「はい」 「殴ってもいいか?」 「どうぞ」 「…………言い訳もなしか」 「言い訳なんて出来ません」 「お前がそんな顔をするなんてね」 「正直、突然冬矢に避けられた時よりショックです」 「参ったな……」 「冬矢」 「一度目は実の弟のお前を諦めた……そして二度目は愛した弟に大切な奴を奪われたなんて……」 「初めて気持ちを言ってくれましたね」 「気持ちが言えたのはもう愛していないからだ」 「ええ」 「だけどお前には感謝してるよ」 「………………」 「俺が翔の傍にいる……翔が誰を愛していてもね」 冬矢は本気だ きっとこのチャンスは逃さない 「辛い思いをしたのは私も同じですよ……でも私は逃げの選択はしなかった……何故だかわかりますか」 「俺を信じていたからだろ?」 「はい」 「……………お互い幸せなんて求めてはいけなかったのかもな」 やはり冬矢は後悔していたんだ ずっと………
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