1787人が本棚に入れています
本棚に追加
/226ページ
誰かがノックしている
いや、しているような気がする
今の俺は、頭の中がからっぽ
何も考えられない
周りも見えない
見たくない
窓際に座り、ボンヤリ暗い部屋の空間を見つめていた
「入るぞ」
「…………冬矢」
「成る程ね」
「………………」
「お前にも心当たりがあるみたいだな」
「やはり冬矢はごまかせませんね」
「正直、翔の様子がおかしいのはお前が原因だとは思いたくないよ」
「翔……の様子は?」
「話をするのが先だろ」
「冬矢……」
やはりごまかせないか
これだから双子は厄介だ
小さな心の動揺も隠せない
諦めて暗闇の中で静かに話をした
「翔の為にしたはずが自分から地雷を踏んでしまいました」
「………俺はお前のように賢くないからわかるように話せ」
「手を出した奴に脅されたんですよ……この私が……クスッ」
「脅された?」
「もう何もしないと言ったら写真を翔に見せると」
「……大体はわかったがお前の口で最後まで話せ」
「私は翔にその写真を見られたくなかった……だから要求を受け入れてそいつと……そして翔が部屋にやって来て……」
「写真ではなくリアルに見られた訳か」
「………はい」
「和海」
「はい」
「殴ってもいいか?」
「どうぞ」
「…………言い訳もなしか」
「言い訳なんて出来ません」
「お前がそんな顔をするなんてね」
「正直、突然冬矢に避けられた時よりショックです」
「参ったな……」
「冬矢」
「一度目は実の弟のお前を諦めた……そして二度目は愛した弟に大切な奴を奪われたなんて……」
「初めて気持ちを言ってくれましたね」
「気持ちが言えたのはもう愛していないからだ」
「ええ」
「だけどお前には感謝してるよ」
「………………」
「俺が翔の傍にいる……翔が誰を愛していてもね」
冬矢は本気だ
きっとこのチャンスは逃さない
「辛い思いをしたのは私も同じですよ……でも私は逃げの選択はしなかった……何故だかわかりますか」
「俺を信じていたからだろ?」
「はい」
「……………お互い幸せなんて求めてはいけなかったのかもな」
やはり冬矢は後悔していたんだ
ずっと………
最初のコメントを投稿しよう!