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その後は沈黙が続いた そして静かに冬矢は出て行った 楽しかった日々もつかの間の夢 また俺達は憎しみ合わなければいけないらしい 「和海」 翔……? 何故 「開いていますよ」 「うん」 ドアを開ける音と廊下の明かりが差し込んだのは同時 「暗い……」 「どうしました?」 「うん……あの……今日はバレンタインだから」 「バレンタイン」 そうか、もう0時を過ぎていたんだ 「和海にもチョコを」 「クスッ、こんな私にもですか」 「………いろいろ考えたんだけど、和海の恋愛に口出し出来ないし……でも友達の関係は壊したくないから」 「私の恋愛?何も知らないくせに笑える……」 「和海」 俺は決めていた 今度譲るのは俺 翔は物ではないが嫌われる選択をした 「翔もやりたいならして差し上げますよ」 「和海……」 「それとも冬矢と毎日やりまくりですか」 泣きそうだ 早く嫌いだと言って 「やめてよ……お願い……俺を悲しませないで」 「バカらしい…もう仲良しゴッコは終わりにしましょう」 「やめて……お願い……お願い……」 様子がおかしい しかし近付く事は出来ない きっと抱きしめてしまうから 「やらないのですか?」 「やめろ……やめろやめろ!!」 何だこの感覚 暗闇の中は翔と俺しか居ないはずなのに…… すぐ傍に気配を感じる 「今夜は雷だよ」 「………翔」 「好きだよね?雷……」 違う この翔は…… 「ダメだよ、翔を悲しませちゃ……でももう遅い」 ああ それでいい このまま翔に殺されるなら本望だ もう何も考えずに済む 「お祈りはした?」 「祈れば天国に行けますか?」 「さぁな……ずっと暗闇かもね」 「仕方がありませんね」 すぐ傍に居る きっと俺を見つめながら冷たく笑っているのだろう 「……ダメ」 「翔は見ていろ……こいつが死ぬ所をね」 「ダメ……和海はうそつきだ……」 最後の最後に気付かれてしまうなんて 「嘘つきでも何でもいいよ……俺はこいつを殺したい」 「……和海、そいつを消して!」 「翔……」 「早く!」 まだ翔に未練があったのか? 俺は咄嗟にデスクの上に置いてあるシルバーのペーパーナイフを手に取り、翔めがけて突き刺した 「くっくっ……馬鹿な……奴……本当の地獄を……味わうんだな」 そう言い残し、翔の気配が消えた 俺は……
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