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「翔……大丈夫ですか?翔?」
暗闇の中で翔が横たわっていた
「翔?」
そっと抱き起こそうとして気付いた
俺の手に纏わり付く生温いものに
「どうして……」
「和海……は嘘つき…」
「貴方も嘘つきです」
「俺の事……嫌いでしょ」
「嫌いです」
「俺……も…和海が……大嫌い……大嫌い……大……」
「翔!」
「あいつは俺で……俺はあいつ……二人は別人……だけど……命は…一つ……バラのジャム…美味しかっ……」
「翔……どうして…どうして俺を助けたんだ!」
翔には気付かれてしまった本当の気持ち
俺は翔を愛してる
冷たい翔をそっとベットに横たえてバラのジャムを唇に乗せた
「私は翔のチョコを」
苦しみから逃げたいと思ったのは俺
だけど翔を失う以上の苦しみなどこの世には存在しない
薔薇のチョコを一つ食べてゆっくり立ち上がった
「冬矢、やはり諦めて下さいね……翔の最後の告白の返事を天国でしなければいけなくなりました」
また冬矢を苦しめてしまうのが辛い
「きっと一生許してはくれないでしょうね……だから私は待っています……先に行ってまた一緒に笑える日までずっと………」
引き出しから取り出したのは本物のナイフ
「翔……大嫌いでしたよ……」
本当の言葉は天国で言おう
ナイフを首筋に当てて、そっと目を閉じた
最後の瞬間、俺の脳裏に浮かんだ顔は……
本物の天使のような翔の笑顔だった
ー完結ー
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