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由香里だ!
雲が、二年前に亡くした妻の面影を描き出したのだ。
由香里……
時よ止まれ!
もう少し、あと少しだけ、この夕空を眺めていたい。
そうだ! 屋上だ!
僕は部屋を飛び出しエレベーターを待つ時間を惜しんで階段へ向かった。
「あ……葉山さん。ちょっと訊きたいことがあるの」
部長秘書の桐原朱美が通路で呼び止めたが、僕はそれを振り切って階段へ駆け出していた。
「すまない! すぐに戻るから」
僕は階段を使い3階から屋上へ一気に駆け上がった。
由香里……待っててくれっ!
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