抱擁

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 長い口づけの後、朱美の首から胸へキスの雨を降らせ、やがて舌による愛撫に変えると、彼女の吐息が漏れた。 「ああ……」  朱美をうつ伏せにして背中から首筋に熱い舌を這わせ、更に時間をかけて全身を隈無く愛撫した。もう一度、躰を上向かせて豊満な乳房に愛撫を加えると、朱美は瞼を震わせた。 「はううっ……お願い……良介さん……来てっ」  朱美は切れ切れに男を求める言葉を発した。  彼女の躰が充分に潤み、男を受け入れる態勢になったところで、僕は躰を重ねて行った。  朱美は、待ちかねたように女らしい哭き声を上げた。そして、その歓喜の声は何度も部屋に響いた。  本能のままに、一度は果てた。  そのまま行為に没入しそうになる。我を忘れそうになる衝動をかろうじて押しとどめた。  彼女の心と躰が満足するまで、何度も抱きしめ、幾度も口づけを繰り返し、指も舌も縦横に使った。  彼女の満たされぬ想いの全部を埋めることは叶わないが、ひとときの癒やしなら与えられる。  彼女の躰が頂点へ昇り詰め、満たされるまで、男の役割りを果たそうと決めていた。  朱美が眠りつくまで、それは明け方まで続いた。
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