香織

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 香織からの電話で目を覚ました。  時計に眼を遣ると13時5分前だった。 「お父さん、まだ寝てたの?」 「うん。二度寝入りしちまった。これから来るのかい?」  朱美の部屋で少しだけ、まどろんだが、やはり香織の手前、朝一番で自宅へ戻った。 「うん。でも、今バイト中だから19時に車で迎えに来てっ」 「えっ? アルバイトを始めたのか?」 「ええ。ポートタワーでね。時給800円のお土産売店の店員。キャンパスからも、そう遠くないし、いいかなって」 「ふーん。そうなのか……。それで、場所は?」 「やだ、お父さんたら。前にお母さんとデートした事があったんでしょ? お母さんからは、そう聞いたけど。忘れたの? まあ、いいわ。ナビで探せば解るから。ポートタワーよ。いい? 着いたら電話して。休憩時間終わり。切るわよ。じゃね」 「うん、わかった」  そうだ。そう言えば、由香里と付き合い出した頃に神奈川から房総方面へドライブしたことがあった。  内房から南へ下って、シーワールドで一泊。帰りは外房を回って、茂原から浦安のディズニーランドを目指して走った。  内房で最初に立ち寄ったのがポートタワーだった。  あれから20年、経ったのだ。
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